相談前に用意する「困りごとメモ」の作り方
限られた面談時間で要点を伝えるメモのテンプレートと書き方。
ケアマネとの情報共有に医師の所見が役立ちます。認知症を専門とする医師が48時間以内に回答します。初回500円。
相談する佐伯久美子さんが母のトキさん(82歳、アルツハイマー型認知症)の担当ケアマネジャーとの月1回の面談に慣れてきたのは、介護を始めて1年が過ぎた頃だった。それまでの久美子さんは、面談の30分間に何を話せばいいのかと、毎回ぼーっとその場に同席していただけだった。
「最近どうですか」とケアマネの西田さんに聞かれても、「うーん、特に変わりないです」と答えてしまう。
ところが面談が終わって西田さんが玄関を出た瞬間、「そういえば先週、トキさんが夜中の2時に台所で鍋を焦がしかけたことも、デイサービスの日に『行きたくない』と泣いて困ったことも話しておくべきだったかな……まあ話してもしょうがないか」とふと思う。毎回がそんな調子で気が付けば早1年が木過ぎていた。
転機は、ある月の面談で西田さんが何気なく言った一言だった。「久美子さん、次回までに1か月の出来事を日記帳に書いておいてもらえると助かります。当日いざ思い出すのって難しいですから。私なんか『昨日のお昼ご飯は何を食べたの?』って聞かれてもすぐに出てこない位ですし」といって笑った。
久美子さんはその日から台所の壁にA4のノートをマグネットで貼り、気づいたことをその場で走り書きするようにした。「AM3時、トイレの場所がわからず廊下で立ち尽くしていた」「AM7時デイの迎えの車を怖がって乗車を拒否、いつもも同じ車なのに理由不明」「本人『足が痛い』と6日連続で繰り返しているが、足を見てもどうともない」。
最初はただの雑多なメモのつもりだったが、言われたからにはと次の面談で西田さんに渡すと、西田さんの目つきが変わった。「これ、すごく助かります。足の痛みは受診を検討しましょう。夜間の徘徊は見守りセンサーの導入も考えられますね」。30分の面談で、これまでにない具体的な提案が次々と出てきた。
以来、久美子さんはメモを「困りごとメモ」と名付け、日付・時間・状況・本人の言葉・自分の対応・結果の6項目を簡単な表にして書くようにした。時間がない日は箇条書きでも構わない。大事なのは「その場で」書くこと、そして「良かったこと」も併せて記録することだと気が付いた。
デイサービスの職員さんが工夫してくれたおかげで拒否がなくなった日のことも書いておいたら、次の面談でケアプランの見直しに役立った。久美子さんは今では面談の前日に、メモを見返しながら「今日伝えたいこと」を3つに絞ってケアプランに臨むようにしている。
困りごとメモの作り方と使い方
その場で書く、後回しにしない
記憶は数時間で薄れる。久美子さんが台所に貼ったノートのように、目につく場所にメモを置き、気づいた瞬間に一行だけでも書き留める習慣が最も効果的だ。
日付・時間・状況・本人の言葉をセットで残す
「夜に混乱した」だけでは伝わらない。「2時、台所で鍋を焦がしかけた」のように具体的な時刻と場面を書くことで、ケアマネジャーは原因や対応策を考えやすくなる。
困りごとだけでなく「うまくいったこと」も書く
デイサービスでの拒否が工夫で解消した例のように、良い変化の記録はケアプラン継続や他のサービス調整の判断材料になる。
面談前に「今日伝えたいこと」を3つに絞る
メモが溜まっても全部を話す時間はない。前日にメモを見返し、優先度の高いものから順番に話す準備をしておくと、限られた時間を有効に使える。
体調面の変化は特に具体的に記録する
「足が痛いと3日連続で訴えた」のように頻度や継続日数を書くと、受診や医療系サービスの提案につながりやすい。数字は説得力を持つ。
家族間で1つのメモを共有する
複数の家族が交代で介護している場合、同じノートやアプリのメモを使うことで、誰が見ても状況が把握できる状態にしておく。
よくある失敗パターン
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記事の内容についての疑問や、ご自身・ご家族の状況に合わせた相談を、認知症を専門とする医師に直接お聞きいただけます。
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面談当日に思い出そうとする
30分前に慌てて記憶をたどっても、細かい状況やセリフは抜け落ちてしまう。当日の記憶頼みは最も避けたい進め方だ。
「特に変わりないです」で済ませてしまう
久美子さんが最初の頃そうだったように、漠然とした一言で済ませると、実際に起きている困りごとがケアマネジャーに伝わらないまま面談が終わってしまう。
困りごとだけを羅列し優先順位をつけない
メモが多すぎて全部話そうとすると、本当に相談したいことが埋もれてしまい、面談時間内に肝心な提案までたどり着けないことがある。
メモを介護者本人しか見ない場所にしまい込む
書いても見返さなければ意味がない。手帳の奥や別の部屋に置いたままでは、面談前に活用する機会を逃してしまう。
良かったことを記録せず不満だけを伝える
良かったことも積極的に共有したい。そこから何が成功の秘訣だったのかを推理することで次の目標がぐっと近づくかも知れません。
困りごとメモ 実践チェックリスト
今では久美子さんの台所には、3冊目のノートが吊るされている。西田さんとの面談は今も月1回だが、以前のような手探りの30分ではなく、メモを片手に「今月は足の痛みと夜間の対応について相談したいです」と要点から話せるようになった。トキさんの体調変化にも早めに気づけるようになり、久美子さん自身の気持ちにも少し余裕が生まれている。困りごとメモは、母のためだけでなく、久美子さん自身を助ける記録にもなっていた。
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