ケアマネにうまく要望を伝えるコツ
遠慮せず、角も立てず希望を届けるための伝え方の具体例。
ケアマネとの情報共有に医師の所見が役立ちます。認知症を専門とする医師が48時間以内に回答します。初回¥500〜。
相談する渡辺健一(54)が、母・トシ子(85)の担当ケアマネジャー・小川美穂さんと3回目のモニタリング面談で顔を合わせたのは、ある水曜日の午後3時だった。トシ子は6年前に脳梗塞をきっかけに血管性認知症と診断され、要介護2の認定を受けて以来、週3回のデイサービスと週1回のヘルパー訪問を利用していた。
「渡辺さん、この1ヶ月、何か困っていることはありますか」。小川さんはいつもそう聞いてくれる。だが健一はその度に「いえ、特に大丈夫です」と答えてきた。本当は困っていることが山ほどあった。会社が始業8時半なのに、デイサービスの送迎は10時。その1時間半、トシ子は一人になる。先月はその時間帯に台所で転倒し、膝を擦りむいた。ヘルパーの訪問時間も、健一が仕事で在宅していない時間帯に固定されていて、トシ子が服薬を忘れることが続いていた。それでも健一は「これ以上わがままを言ったら、面倒な家族だと思われるのではないか」「ケアマネさんも忙しいのに、個人的な都合で時間を変えてもらうなんて申し訳ない」と、言葉を飲み込んでいた。
限界が来たのは、その週末だった。金曜の夜、疲れ果てて自室で倒れるように眠り込み、翌朝トシ子が台所で転んで頭を打っているのに気づかず、1時間近く放置してしまった。幸い大事には至らなかったが、「自分が本音を言わなかったせいで、母を危険にさらしてしまったのではないか」と急に不安になった。
次のモニタリングで、健一は前夜にノートへ書き出したメモを持って臨んだ。「渡辺さん、この1ヶ月、何か困っていることはありますか」といつもの様に聞いてくれた小川さんに対して、「実は困っていることがいくつかあるんです。デイサービスのお迎えが10時だと、私が家を出る8時半からの1時間半、母が家で一人になります。先月実はこの時間帯に台所で転倒しました。お迎えを9時に早めていただくか、あるいは10時まで見守りサービスを入れていただくか、どちらか可能でしょうか」。具体的な時間と、実際に起きた出来事、そして「こうしてほしい」という2つの選択肢まで整理して簡潔に提示すると、小川さんは「それは大事な情報です、教えてくださってありがとうございます」と言い、デイサービス事業所と調整し、翌週には送迎時間を30分早める形で対応してくれた。健一はほっと胸をなでおろした。それ以来、健一は「困っていること」と「こうしてほしいこと」をセットでメモに残し、必ず読み返してからモニタリング」面談に臨んでいる。
ケアマネに要望を伝える5つのコツ
1. 「困った事実」とセットで伝える
「色々大変なんです」だけでは対応に困ってしまう。健一のように「〇曜日の〇時に転倒した」「〇時に薬を飲み忘れた」など、日時と具体的な出来事をセットにすると、ケアマネジャーは事業所や関係者に説明しやすくなる。
2. 要望は「してほしいこと」を1つに絞って言い切る
不安を述べるだけで終わらせず、「送迎時間を早めてほしい」のように、してほしい行動を明確に表現する。曖昧なまま終わると「ご不安なんですね」と議題が流れてしまいがち。
3. 選択肢を添えると調整が早い
健一が「時間を早めるか、見守りを入れるか」と2案示したように、要望に幅を持たせると、ケアマネジャーが事業所側の事情と照らして現実的な対策を選びやすくなる。
4. 「申し訳ない」より「一緒に考えてほしい」という姿勢で伝える
遠慮して言葉を飲み込むと重要な情報が届かない。ケアマネジャーは家族の要望を調整するのが仕事であり、伝えること自体は迷惑ではないと理解しておく。
5. その場で決着しなくてもよい、まず伝えることを優先する
すぐに解決策が出なくても構わない。まずは事実と要望を記録に残してもらうことで、次回の会議やサービス担当者会議での検討材料になる。
よくある失敗パターン
この記事についてもっと詳しく知りたい方へ
記事の内容についての疑問や、ご自身・ご家族の状況に合わせた相談を、認知症を専門とする医師に直接お聞きいただけます。
初回500円・48時間以内に医師が回答
「わがままだと思われたくない」と黙って飲み込んでしまう
健一が最初にそうだったように、遠慮から本当の困りごとを話さないと、状況が悪化してから初めて伝わることになり、対応が後手に回る。
不満だけを感情的にぶつけてしまう
「全然対応してもらえない」と抽象的に訴えても、ケアマネジャーは何を変えればよいか判断できない。事実と要望をセットで整理することが必要。
要望を一度にたくさん詰め込みすぎる
「あれもこれも」と一気に伝えると、優先順位が伝わらず対応が分散してしまう。まずは一番困っていることから絞って伝える方が動きやすい。
面談の場でしか伝えないと決めつける
モニタリングは月1回程度のことが多く、それを待っていると対応が遅れてしまうことも。困りごとが起きたタイミングで、電話やメールで先に伝えておくという選択肢もある。
ケアマネへの要望を伝える前のチェックリスト
あれから半年、健一は困りごとが起きるたびにスマートフォンのメモアプリに日時と内容を書き留め、月1回のモニタリングを待たず、気づいた時点で小川さんに短いメールを送るようになった。トシ子の転倒はその後一度も起きていない。「言っていいんだ、と分かってからは気持ちがずっと楽になりました」と健一は話す。遠慮せず、しかし丁寧に伝えることが、母の安全と自分自身の負担軽減の両方につながっている。
この記事についてもっと詳しく知りたい方へ
記事の内容についての疑問や、ご自身・ご家族の状況に合わせた相談を、認知症を専門とする医師に直接お聞きいただけます。
初回500円・48時間以内に医師が回答
コメント
まだコメントはありません。最初のコメントを投稿しましょう。