介護費用の不安をケアマネに相談する
費用負担を抑える提案を引き出す相談の切り出し方。
ケアマネとの情報共有に医師の所見が役立ちます。認知症を専門とする医師が48時間以内に回答します。初回¥500〜。
相談する# 「お金の話」を我慢しないことが、介護を続ける力になる
小林由美(58)が母・静江(84、レビー小体型認知症、要介護2)を自宅で介護し始めて8か月が経った、ある夜19時のことだった。実家に嫁いだ弟の妻から電話が入った。二人は静江の日々の様子を記録する家族用の見守りアプリを共有しており、由美が入力する費用のメモを見た弟の妻が「お義姉さん、今月の金額、急に増えてません?大丈夫?」と心配して連絡してきたのだった。由美が通帳を確認すると、思わず息を呑んだ。デイサービス週5日、月1回のショートステイ、福祉用具レンタル代を合わせて、その月の自己負担は12万8千円。パート収入の半分近くが、介護費用に消えていた。
もともと静江の介護は、デイサービス週3日程度で落ち着いていた。しかしながら、ここ1か月ほどで静江の転倒とせん妄のような夜間の不穏が急に増えた。由美は「これ以上ひとりで見ていたら、母に何かあったら」という焦りから、担当ケアマネジャーの大野さんに相談する間もなく、デイサービスを週5日に増やし、ショートステイも新たに予約した。結果として費用は一気に膨らんだが、由美はそのことを誰にも伝えていなかった。「他のご家庭ももっと大変なはずだから」「お金の話をすると、母のケアを削られるのでは」——そんな思い込みが、由美を一人で抱え込ませていた。
その翌日はモニタリング訪問が予定されていた。前回の訪問はサービスを増やす前だったため、大野さんにとってはこの日が、費用の急増と由美の疲弊を知る初めての機会だった。玄関に入るなり、大野さんは由美のやつれた顔と、いつもより口数の少ない静江の様子に気が付いた。「小林さん、どこかお疲れのようですが、何がありましたか」——そう聞かれた由美は、こらえきれずに涙ながら、相談せずにサービスを増やしてしまったこと、結果この1か月の出費が跳ねあがったことを打ち明けた。
大野さんは静かにこう言った。「小林さん、教えてくださってよかったです。急に不安定になったときこそ、一言だけでも相談してもらえたら、増やし方を一緒に考えます。それに高額介護サービス費という制度があって、世帯の1か月の自己負担合計が44,400円を超えた分は、申請すれば払い戻されるんです。ショートステイの食費や居住費も、世帯の所得によっては負担限度額認定で軽減できる可能性があります」。
大野さんは市の窓口への高額介護サービス費の申請書類を準備し、静江の要介護度と所得区分から負担限度額認定の対象になることを確認してくれた。さらに、費用のかかる個別対応型のデイサービスを週2回、比較的単価の低い共同型のプログラムを週3回に組み合わせることで、静江の活動量を保ちながら月の負担を2万円以上抑える新しいケアプランを一緒に作ってくれたのだ。
由美は「こんな制度があるなんて、知らずに全部自分ひとりで抱えてしまうところでした」と呟いた。
費用の不安を伝える相談の切り出し方
サービスを増やす・減らす前に、まず一言相談する
由美のように、症状の変化に焦って自己判断でサービスを増減させると、費用面でもケア内容の面でも後から調整が難しくなる。「増やしたいけれど、費用が心配」とその場で伝えるだけで、ケアマネジャーは制度や組み合わせ方から一緒に考えられる。
「困っている」ではなく「数字」で伝える
「お金が心配です」だけでは、ケアマネジャーも対策を立てにくい。由美のように「今月の自己負担は〇万円でした」と具体的な金額を通帳や請求書とともに見せると、制度に照らして即座に判断してもらいやすくなる。
モニタリング訪問を、費用相談の定例機会にする
月1回の訪問は、体調だけでなく費用の話をする絶好のタイミングでもある。「今月の請求書、一緒に見てもらえますか」と切り出すだけで、対策が始まる。
高額介護サービス費の対象かどうかを、必ず聞く
世帯の所得区分によって、自己負担の上限額(44,400円や24,600円など)は異なる。上限を超えた分は申請すれば戻ってくるため、請求書を見せながら「上限を超えていませんか」と確認したい。
施設・ショートステイ利用時は、負担限度額認定を確認する
食費・居住費が所得によって軽減される制度がある。やはり申請していないと知らずに満額を払うことになってしまう。
医療費控除との合算を相談する
介護サービス費と医療費を年間で合算して確定申告すれば、控除を受けられる場合がある。ケアマネジャーは税務の専門家ではないが、合算できる費用の目安は把握していることが多い。
よくある失敗パターン
この記事についてもっと詳しく知りたい方へ
記事の内容についての疑問や、ご自身・ご家族の状況に合わせた相談を、認知症を専門とする医師に直接お聞きいただけます。
初回500円・48時間以内に医師が回答
症状が急変したときに誰にも相談せず自己判断で動いてしまう
不安と焦りから、由美のようにサービスを増やしたり減らしたりし、費用面の見通しを立てないまま進めてしまったり、逆に活動量の低下から身体機能を落としてしまうことがある。
遠慮して、費用の相談を後回しにする
「迷惑をかけたくない」という気持ちから相談を避け、変化があってもひとりで抱え込んでしまう。
高額介護サービス費や負担限度額認定の存在を知らない
制度自体を知らないために、本来戻ってくるはずのお金を申請せず、そのままにしてしまう。
請求書をきちんと確認しない
毎月の明細を細かく見ずに引き落とし額だけを確認し、内訳や軽減の余地に気づかない。
費用の話を「お金にがめつい」と感じて避ける
お金の相談は、決して恥ずかしいことではない。適切なケアプランを組むために必要な情報だと、捉え直したい。
費用相談チェックリスト
あれから半年、小林由美の家計は月2万円以上軽くなり、静江は無理のない範囲でデイサービスを利用できるようになった。由美は「介護費用の軽減がこんなに気持ちを軽くしてくれるなんて思わなかった」と笑う。今では毎月の訪問のたびに請求書を並べ、遠慮なく数字を見せながら大野さんに相談するのが習慣になっている。介護費用の不安は、抱え込むほど選択肢を狭めてしまう。ケアマネジャーは体調だけでなく家計の相談相手でもあることを、由美の経験は教えてくれる。
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