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ホーム記事認知症の徘徊——なぜ起きるのか、家族の対応ガイド
BPSD症状医師査読済 · 2026年7月公開 2026年7月9日

認知症の徘徊——なぜ起きるのか、家族の対応ガイド

「目的のない行動」に見えても、本人には切実な理由があります。徘徊が起きる医学的な理由と、安全を守りながら対応する7つの工夫、GPSなどの備えを解説します。

BPSD徘徊GPS周辺症状認知症 対応

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こんな状態が続いたら

  • 家の中や外を、目的の場所にたどり着けないまま歩き回る
  • 「仕事に行く」「家に帰る」など、本人なりの理由を口にしながら出て行こうとする
  • 一人で外出し、道に迷って帰れなくなったことがある
  • このような行動が繰り返される場合、見当識障害を背景としたBPSD(周辺症状)としての徘徊を考えます。安全(転倒・交通事故・行方不明)に関わる症状のため、原因の理解と並行して、備えを先に整えておくことが重要です。


    なぜ徘徊が起きるのか


    周りから見れば「目的のない行動」に見えても、本人の中には「仕事に行かなければ」「子どもを迎えに行かなければ」「実家に帰らなければ」といった、その人にとって切実な目的がしばしば隠されています。見当識障害によって現在地や時間の感覚が失われ、過去の記憶に基づく行動が現在の行動として現れることが徘徊の要因のひとつとされています[1]。


    不安や居場所のなさ、日中の活動不足による焦燥感も、歩き回る行動につながる要因です。またレビー小体型認知症では、幻視への反応として「何かから逃げる」あるいは「逆に誰かを探す」形の徘徊が見られることがあります。


    きっかけによって、以下のようにいくつかの典型的なパターンに分類することができます(もちろん必ずしもこのパターンに当てはまるというわけではなく、むしろ例外の方が多く経験される印象もあり、個別の事例をそれぞれ考えることが何より大切なことは言うまでもありません)。


    きっかけ典型的な訴え対応の方向性
    出勤・仕事の記憶「仕事に行かなきゃ」役割を用意し、まず気持ちを受け止める
    帰宅願望「家に帰りたい」否定せず、安心できる声かけをする
    探し物・迷子目的の場所を探して歩き続ける一緒に歩き、目的を確認する
    不安・焦燥落ち着かず歩き回る環境刺激を減らし、活動で発散させる

    今日からできる7つの工夫


    GPS端末や見守りサービスを導入する → 行方不明になった際の捜索時間や不安を大きく短縮できます。靴や衣類に取り付けられるタイプが便利かも知れません。


    慣れた道・場所を選んで外出する → ご本人に自覚がある場合には意識して慣れた道を使うことも有効です。見慣れた環境は混乱を防ぎ、不安による徘徊のきっかけを減らします。


    玄関にセンサーやベルを設置する → 外出に気づける仕組みを作ることで、対応の初動を早めることができます。


    近隣・地域包括支援センターに事前に情報共有しておく → 行方不明時に協力を得やすくなり、発見までの時間が短縮されます。


    日中の活動量を確保する → 散歩や軽い運動で活動欲求を満たすと、「目的が自分にもはっきりしないからこそ目的を探して歩き回る」ための行動が減ることがあります。


    「なぜ出かけたいか」を否定せず確認する → 無理に止めるより、行き先や理由を聞き、一緒に歩きながら気持ちを落ち着けるほうが効果的な場合があります。


    衣類や持ち物に連絡先を記載しておく → 名前・連絡先を記したカードや衣類タグは、発見時の身元確認を助けてくれます。


    やってはいけないNG対応

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    NG対応

    力づくで引き止める・怒鳴って制止する → 恐怖心や反発を強め、かえって行動せねばという意思が揺らぎないものになる可能性があります。

    「どこにも行かせない」と家に閉じ込める → 行動の自由を過度に制限すると、不安や興奮がさらに強まりやすくなります。

    家族だけで探し続けて、通報を後回しにする → 行方不明の可能性がある場合は、早めに警察・地域包括支援センターへ連絡することが安全確保の基本です。最悪の局面を迎えるより前に頼りましょう。

    GPSなどの備えを「まだ大丈夫」と先送りにする → 初めての徘徊が起きたときは、すでにしっかり備えを始めた方が良い時期かも知れません。


    木村和夫さん(83歳、アルツハイマー型認知症)の場合


    夕方になると「そろそろ会社に戻らないと」と玄関に向かうようになりました。家族が「もう仕事は落ち着きましたよ、けれど一緒に外を歩きませんか」と外出したい気持ちを、「夕方の時間帯に一緒に近所を散歩する」という別の日課で置き換えて習慣化したところ、会社に顔を出さないとと慌てる頻度が減りました。


    山本トミさん(79歳、レビー小体型認知症)の場合


    夜間に「誰か来ている」と言って家の中を歩き回ることがありました。家族が原因を探ると、照明の陰影が幻視の引き金になっていることが分かり、夜間の照明を工夫したところ、幻視が減って歩き回ることが少なくなりました。合わせて外出のリスクに備え、GPS端末も導入しました。


    よくある家族の疑問


    Q. 目を離した隙にいなくなってしまいました。

    すぐに近隣や警察に連絡してください。行方不明が疑われる場合は、家族だけで探すより早期に周囲の協力を得るほうが発見が早まります[2]。


    Q. GPSを持たせたがることを嫌がります。

    本人の抵抗感が少ない形を工夫することをおすすめします。例えば「現在地を知るための道具」ではなく「交通事故にあったときなど自分から連絡が取れない状況になった時の安心グッズ」として自然に持ち物に取り付ける。あるいはご本人の意識が及びにくい衣類や靴に内蔵するタイプを選ぶなど。


    Q. 施錠を強化すれば徘徊は防げますか?

    安全対策として有効なこともありますが、行動そのものへの不安・焦燥が解消されるわけではありません。むしろ過度な閉じ込めは「やはりここは変だ、脱出せねば!」とかえって興奮を強めてしまうことがあり、環境調整と併用することが大切です。


    Q. 日中は寝ているのに、夜間になると起きだしてどこかに旅立ってしまうのですが

    夜間は視界が悪く、体温低下や転倒のリスクも高まるため、特に注意が必要です。夜間の徘徊が続く場合は、昼夜逆転や睡眠障害の観点からも医師に相談することをおすすめします。


    Q. 施設に入所すれば徘徊はなくなりますか?

    環境が変わることで一時的に落ち着くこともありますが、見当識障害そのものが解消するわけではないため、施設でも同様の行動が見られることがあります。


    Q. 何度も同じ理由で出て行こうとします。説得を繰り返すしかないですか?

    毎回説得を試みて行動を制止しようとするより、その行動の背景にある気持ち(仕事の役に立ちたい、自分でも正体が分からない不安など)を汲み取り、代わりの役割や活動を用意する方が効果的かと思います(例えば夕食の準備を手伝ってもらう、部屋にいる子どもに声をかけて呼んでもらう、夕食前に一緒に公園を歩いて少し運動してから食事にする、など決まった日課を作ってみましょう)。


    Q. 近所の人に認知症であることを伝えるのは抵抗があります。

    認知症であることを伝えて、必要最小限の情報(連絡先・特徴)を信頼できる範囲で共有するだけでも、発見までの時間が大きく変わります。地域包括支援センターの方にお願いをして情報共有を手伝っていただくのも方法です。


    関連コンテンツ


  • 体験談: 夜間の徘徊への対応
  • Tips: 迷子対策で身元情報を携帯
  • Tips: 慣れた道・場所を選ぶ
  • 知識: アルツハイマー型認知症について
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    本記事は神経内科・精神科医師 yuyu MD PhDによる監修・査読を経て公開しています。 査読日: 2026年7月

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    公開日: 2026年7月9日

    参考文献

    1. [1]日本神経学会. 認知症疾患診療ガイドライン2017 (2017)
    2. [2]NICE. Dementia: assessment, management and support. NICE guideline NG97 (2018)

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