
「えっと……ごめん、誰だっけ?」
久しぶりに行われた同窓会。目の前にいる人を見て、あなたは頭を抱えてしまいます。声は聞き覚えがあるけれど、顔つきも背の高さも全然違う。名前を聞いてようやく「えー!あの〇〇くん!?」と驚く。もちろん同窓会ではよくある風景です。
あるいはもっと短い期間で、例えば小学校の時も、長い夏休みのあとに友達の背がすごく伸びていて「一瞬、誰かわからなかった!」なんて経験があるかもしれません。それが10年ぶりともなれば、わからなくて当然です。
なぜ同窓会で「誰だっけ?」となるのでしょうか。
答えはとても簡単です。会っていなかった「空白の10年間」の記憶がないからです。あなたの頭の中のアルバムには、10年前の子どもの頃の写真しかありません。そこからいきなり大人の姿を見せられても、昔と今の姿が繋がらないのは当たり前ですよね。
実はこの現象、認知症の方が言う「あなたはどちら様?」という言葉のヒミツを解き明かすカギになります。
「ずっと一緒に暮らしているのに、なんで私のことを忘れちゃうの?」と、家族は悲しくなってしまうかもしれません。でも、少し想像してみてください。認知症という病気は、頭の中のアルバムに「新しい写真」を貼り付けるのがとても苦手になる病気です。
たとえば、認知症になってから10年が経ったとしましょう。家族は毎日顔を合わせて一緒に過ごしてきたつもりでも、ご本人の頭のアルバムには、この10年間の記憶がうまく保存されていません。つまり、毎日会っていたとしても、結果としてご本人にとっては同窓会と同じ「空白の10年間」ができてしまっているのです。
目の前に立っている大きく成長したお孫さんを見ても、おばあちゃんの頭の中にあるお孫さんの写真は「10年前のランドセルを背負った姿」のまま。だから、目の前の立派な若者を見て、「うちの孫はまだ小学生のはず。この見知らぬ人はどちら様?」と戸惑ってしまうのです。
そう、ご本人の心の中では、いきなり未来にタイムスリップして、見知らぬ人に親しげに話しかけられているようなもの。まさに「10年ぶりの同窓会」で戸惑っている状況と、まったく同じなのです。
「毎日会っているのに、なんで忘れるの!」と悲しくなる気持ちもわかります。でも、「そっか、おばあちゃんにとっては、今の状況は10年ぶりの同窓会なんだな」と考えてみてください。「私だよ、久しぶり! こんなに大きくなったでしょ?」と笑って返せたら、戸惑っているおばあちゃんも、きっとホッと安心できるはずです。
「誰だかわからない」のは、愛情が消えたからではなく、ただ記憶のアルバムに空白があるだけ。そうやって相手の心の中で毎日起きている「同窓会」を想像してみると、フワッと優しい気持ちになれる気がしませんか。
