
ある日急に「ここはどこだ?」と大声を出したり、夜中に部屋を歩き回ったりする。家族からすると「認知症が急に悪化したのかな?」と思うかもしれません。けれどそれは必ずしも認知症とは限りません。「せん妄」と呼ばれる状態をご存じでしょうか。
せん妄とは?
せん妄は、急に頭の働きが混乱する状態です。昨日まで普通に話していた人が、急に「泥棒がいる!」と言い出したり、昼と夜の区別がつかなくなったりします。原因は、感染症・薬の副作用・入院や環境の変化など。つまり、体の調子が崩れたときに一時的に起こることが多いのです。
認知症とは?
認知症は、少しずつ記憶や判断力が落ちていく病気です。ちょっと前に起こったことを存在ごと忘れてしまったり、同じ質問をまるで初めて質問するように何度も繰り返したりします。進行はゆっくりで、数か月から数年かけて変化していきます。せん妄のように「急に悪化する」ことは少なく、じわじわ進むのが特徴です。
家族が見分けるポイント
スピードの違い
せん妄:急に変わる(さっきまで普通、今は混乱)
認知症:ゆっくり変わる(段々と覚えにくくなる)
波の違い
せん妄:時間帯によって良くなったり悪くなったりする
認知症:日によって多少の差はあるが、あまりはっきりとした変化はない
原因の違い
せん妄:感染症・薬・入院など何かしらの「きっかけ」があることが多い
認知症:明確なきっかけはない、気が付いたら認知症になっている
イメージで例えると……
認知症は「ゆっくり遅れていく時計」。針が少しずつずれていき、気が付いた時には違う時間を指している。いつからずれだしたかは分からないし、じーっとみていてもよく分からないほど少しずつしか変化しない。
せん妄は「突然壊れた目覚まし時計」。突然鳴り響いたり、かと思うと落ち着いたり、昨日までと様子がはっきり違う。思い返せば「昨日床に落としたんだっけな」、みたいに原因に心当たりがあることも多い。
家族ができること
急に様子が変わったら「せん妄かもしれない」と考えることが大切です。
なぜならせん妄は認知症以外の変調(例えば熱や感染症、あるいは薬が体に合っていない可能性など)を示していることがあるから。
→まずは病院に相談しましょう(せん妄は適切な対応で治ることも多いので)。
繰り返すと、「急に変わった」ならせん妄を疑い、「少しずつの変化で気が付いたら変わっていた」なら認知症を考えます。
この見分け方が、ご本人を守り、ご家族にとっても安心への第一歩になりますように。
