認知症の親が一人でバスや電車に乗れなくなり、遠方に住む子供が毎月付き添えない—— 「通院できない=手詰まり」ではありません。訪問診療・代理受診・オンライン相談・地域包括の 活用で、在宅のまま医療・相談につながる手段があります。
ご本人の年齢
75 歳
女性・一人暮らし
相談者
息子(48歳)
東京在住・遠距離介護
通院状況
一人での通院が困難
バス・電車で迷う
最大の課題
医療継続の手段がない
「施設しかない」と思い込み
結論
一人での通院が困難になっても、医療が受けられなくなるわけではありません。訪問診療への切り替え、家族による代理受診、地域包括支援センターへの相談、オンライン相談(認知症コネクトなど)を組み合わせることで、在宅のまま医療や相談につながることができます。まずは地域包括支援センターに電話することが最初の一歩です。
「介護保険はどこから申請する?」「どんなサービスが使える?」を認知症を専門とする医師が整理してお伝えします。
Dr. Koba
認知症専門外来・在宅診療
「通院できなくなった」という相談を多く受けます。特に一人暮らしで遠方に家族がいる場合、 「もう専門的な医療は受けられない」と諦めてしまうケースが少なくありません。 しかし、在宅医療の仕組みは近年大きく充実しており、「通院できなくなった」段階が訪問診療への切り替えタイミングです。
大切なのは「病院に行けないから無理」で止まらず、「では医師の側に来てもらう手段を探す」に切り替えることです。 訪問診療・地域包括支援センター・オンライン相談——これらは「あるとは知っていたが、自分が使えるとは思わなかった」という方が多い手段です。
一人で抱え込まないでください。「どこから始めればいいか分からない」という状態こそ、 相談を活用すべきタイミングです。
「訪問診療」と「往診」は別物です
往診は「急に具合が悪くなったとき一時的に来てもらうもの」、訪問診療は「月1〜2回の計画された定期診察」です。 認知症の継続的な医療管理には、訪問診療(計画的な定期診察)が適しています。 「往診をお願いしたい」ではなく「訪問診療に切り替えたい」と伝えることが重要です。
「訪問診療への切り替え」が最優先です。クリックして詳細を確認してください。
「病院に行けない=診察が受けられない」ではありません。訪問診療は、医師が月1〜2回患者の自宅を訪問して診察する制度です。認知症の診断・処方・経過管理をすべて在宅で行うことができ、介護保険の適用もあります。
訪問診療は「往診」とは異なります。「往診」は急変時に一時的に来てもらうもの、「訪問診療」は定期的に計画されたスケジュールで来てもらうものです。認知症の方が通院できなくなった段階で切り替える方が多く、近年は都市部を中心に在宅医療を専門とするクリニックが増えています。 訪問診療を行う医師は、定期的に自宅で診察しながら症状の変化を継続的に観察します。処方箋の発行も在宅で行えるため、薬局への持ち込みは家族かヘルパーが担います。訪問薬剤師と連携している場合は、薬の配達・服薬指導も在宅で完結します。 手続きは、現在のかかりつけ医に「訪問診療に切り替えたい」と相談するか、地域包括支援センターに「訪問診療を行うクリニックを紹介してほしい」と依頼することから始まります。
なぜこの手段が有効か
認知症の方にとって「慣れない外出」は非常な負担です。移動中の混乱・転倒リスク・疲労による症状増悪——これらは通院をやめることで解消されます。医師が毎月同じ場所(自宅)に来ることで、本人も落ち着いて診察を受けられます。
注意点
佐藤幸枝さん(仮名・75歳)は認知症診断後も半年ほどは長女に付き添ってもらい通院していましたが、佐藤正夫さん(仮名・48歳・東京在住)は遠方で毎月帰省できません。同居していた長女が転勤で引っ越し、幸枝さんは一人暮らしに。「通院できなくなったら施設しかない」という思い込みで行き詰まっていました。
「どうすれば母の医療を続けられるか分からない」という問いで認知症コネクトに相談した正夫さん。「訪問診療への切り替え」「地域包括支援センターへの相談」「代理受診の活用」という3つの手段を整理して回答を受け、「選択肢がある」と初めて実感しました。
地域包括支援センターの担当者が幸枝さん宅を訪問し、状況をアセスメント。認知症対応の訪問診療クリニックを紹介してもらい、月2回の訪問診療が始まりました。同時に要介護認定の申請を行い、ヘルパー週3回の利用も開始しました。
ヘルパー・訪問診療医・ケアマネジャーの3者が連絡を取り合う体制が整い、正夫さんは「何かあればケアマネから連絡が来る」という安心感を得ました。月1回はオンライン(LINEビデオ通話)で母の顔を確認し、認知症コネクトを「細かな疑問を解消する場」として継続利用しています。
相談前
佐藤正夫さん(仮名・48歳)は「認知症の母が一人でバスや電車に乗れなくなった時点で、もう専門的な医療は受けられない」と思い込んでいました。「施設に入れるしかないのか、でも本人は嫌がる」「このまま薬だけ続けて様子を見るしかないのか」という行き詰まり感が続いていました。月に1度の電話で「なんとなく元気そう」を確認するだけの状態でした。
相談後・1ヶ月
認知症コネクトで相談した回答に「訪問診療という選択肢がある」と書かれていて、初めてその存在を知りました。「知らなかっただけで、実は動ける手段があった」という発見が、「自分が動かなければ」という気持ちへと変わりました。地域包括支援センターに電話したその日に、担当の社会福祉士から「来週お宅にうかがいます」という返答があり、「こんなに早く動いてもらえるとは」と驚いたそうです。
2〜3ヶ月後
月2回の訪問診療が始まると、医師から毎回「今月の状態メモ」が送られてくるようになりました。ヘルパーが週3回来ることで「昨日の食事が取れていなかった」「服薬を嫌がった」といった情報がケアマネを通じて正夫さんに届くようになりました。「何かあっても分からない」という遠距離介護の最大の不安が、「ちゃんと情報が来る」に変わった瞬間でした。
現在(相談から4ヶ月後)
現在は「訪問診療医・ヘルパー・ケアマネジャー」の3者が連絡を取り合う在宅チームが機能しています。正夫さんは月1回のLINEビデオ通話で母の顔を確認し、「気になること」があれば認知症コネクトで医師に確認します。「施設に入れるしかない」と思っていたあの閉塞感とは別世界です。次の課題は「もう少し認知症が進んだときの選択肢を今から整理しておくこと」と、前向きに考えられるようになっています。
Dr. Koba より
認知症専門外来・在宅診療
この事例で最も重要だったのは、「通院できない=医療が受けられない」という思い込みを手放せたことです。 多くのご家族が「自分から動いてしまうと失礼かも」「行政には大ごとにならないと頼めない」と感じて動き出せないでいます。
地域包括支援センターは「大ごと」でなくても相談できます。むしろ、「まだ大丈夫」と思っている段階から相談しておく方が、選択肢が広いのです。 いざ急変してから動こうとすると、サービスの手配に時間がかかり、その間の空白期間が家族にとっても本人にとっても辛い時間になります。
うまくいった点
難しかった点
「通院できない」は終わりではなく「在宅医療への切り替えタイミング」です
認知症の進行とともに「一人での通院が困難になる」段階は多くの方に訪れます。 そのタイミングこそ、訪問診療・地域包括・オンライン相談という在宅医療の選択肢に切り替える好機です。 「まず地域包括支援センターに電話する」が、最初の一歩です。