介護の孤立を防ぐ相談先・仲間の見つけ方
家族会・オンライン相談など、つながれる場の探し方。
「これ以上続けられない」と感じたとき、医師の立場から介護体制の見直しや施設選びの視点を提供します。初回¥500〜。
相談する毎朝6時になると、近藤恵子は台所の窓から外を眺めながら、ため息をついた。
母のデイサービスが始まる時間まであと2時間。その間に洗濯を回し、薬を小分けにし、夕食の下ごしらえを済ませなければならない。隣の部屋では、夜中に何度も起き出した母が、今になって逆にようやく眠りについていた。
54歳。パートの仕事はとっくに辞めていた。友人との食事は断り続けているうちに誘われなくなった。夫は単身赴任中で、電話で「大変だな」と言うばかりだ。「大変」のひと言で済むと思っているのか。この毎日を、本当に分かってくれる人が、どこにもいなかった。
そんな時にかかりつけ医の待合室にあった一枚のチラシを偶然手に取った。「認知症カフェ、毎月第3土曜日開催」と書いてある。恵子は最初あまり興味も示さず捨てればいいやと思った。「そもそもカフェに行く余裕なんてないわ」。帰り道にポケットの中でそのチラシはくしゃくしゃなっていたが、何故か結局捨てられなかった。
初めて認知症カフェに参加したのは、それから3週間後のことだ。公民館の一室に、10人ほどが輪になって座っていた。全員が、どこか疲れた目をしていた。恵子は「自分だけじゃないんだ」と思った瞬間、思わず喉の奥がつかえた。
隣に座った女性が静かに言った。「私も最初、泣きながら来たんですよ」。
その言葉だけで、恵子はずいぶん楽になった。何か具体的な解決策が見つかったわけではない。明日からの状況を打破できるわけでもないおだろう。でも、「わかる」と言ってくれる人が存在するということが、あんなにも力になるとは、思っていなかった。
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なぜ介護者は孤立しやすいのか
認知症介護は、外から見えにくいものです。本人が外出できない日が続けば、介護者も家に縛られます。訪問者を呼びにくい状況が続き、気づけば一日中、自宅の外に出ない日もあります。
同世代の友人は、子育てが落ち着いて自由を取り戻し始めた時期だったりします。「介護の話をしても、ぴんとこないだろう」という読みが働き、自分から話題にしなくなります。
「弱音を吐いてはいけない」という心理も強く働きます。「親への愛情があれば乗り越えられるはず」「不満を言うのは親不孝」という思い込みが、介護者を追い詰めます。本音を言える場がなければ、感情は行き場を失ったまま内側に積み重なります。
職場を離れた場合、社会的なつながりが一気に細くなることも多いです。ケアマネジャーや医師との関係はあっても、「仕事の話」という枠の中にあります。同じ立場で本音を語れる横のつながりは、意識して作らないと生まれません。
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家族会・介護者の集いの探し方と活用
地域の家族の会を探す
全国規模では「公益社団法人 認知症の人と家族の会」が各都道府県に支部を持ち、定例会や電話相談を運営しています。市区町村の地域包括支援センターに問い合わせると、近隣で活動しているグループを紹介してもらえることが多いです。
認知症カフェを活用する
認知症カフェは、本人と家族が気軽に立ち寄れる場として全国に広がっています。月1回・2時間程度の開催が多く、専門職が同席していることもあります。「相談しに行く」ではなく「ちょっと寄ってみる」という感覚で足を踏み入れられるのが特徴です。
初参加のハードルを下げる工夫
「合わなければ行かなければいいだけ」という選択肢を持っておくと、かえって参加の決断がしやすくなります。
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オンライン相談・SNSの使い方
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オンライン家族会・Zoomミーティング
「認知症の人と家族の会」をはじめ、複数の団体がオンラインでの交流会や勉強会を定期開催しています。外出できない状況でも参加でき、全国の介護者とつながれます。
SNSコミュニティ
SNSでは「認知症介護」「介護家族」などのハッシュタグで、日常をつづる投稿が多数あります。投稿するだけでなく、読むだけでも「同じ状況の人がいる」ということを感じられます。非公開グループに参加する方法もあります。
専門[相談窓口](/consultations/new)
SNSは匿名で始められる点が強みですが、個人情報の扱いには注意が必要です。本名・住所・施設名などは書かないことを習慣にします。
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よくある失敗パターン
「自分の話ばかりしてはいけない」と萎縮して話せなかった
初参加の介護者に多いです。「みんな大変なのに自分だけ愚痴を言っていい?」と遠慮しすぎて、結局何も話せずに終わることがあります。家族会は実のところ愚痴を言う場としても機能しています。萎縮せず、まず一言だけ自分の現状を話してみるところから始めてみましょう。
一度参加して「合わない」と感じ、つながり全体をやめてしまった
グループとの相性はあります。メンバー構成や進行の雰囲気が自分に合わないと感じることは珍しくありません。ひとつのグループが合わなかっただけで「自分は他人と交流するのが難しい人間だ」と結論を出してはいけません。別のグループあるいは別の形式を試す余地は必ずあります。
オンラインで検索しすぎて情報に飲み込まれた
ネット上には介護に関する情報が大量にあります。不安なときに検索すると、最悪のケースばかりが目に入り、かえって気持ちが沈むことがあります。SNS閲覧は1日30分までなどの上限を決めておくと、情報過多を防ぎやすいです。
「まだ大丈夫」と思い続けているうちに、いつの間にか本当の限界になっていた
例え孤立が深刻になってからでも相談が遅いということはありませんが、追い詰められた状態では行動を起こす気力自体が残っていないことがあります。「困り始めた段階」で動く習慣をつけておくと、回復のスピードが違います。
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家族が知っておきたいチェックリスト
「つながる」ことに、特別な勇気はいりません。最初の一歩は、チラシを捨てずにポケットに入れておくくらいのことでいいのです。介護は長距離走です。ひとりで走り続けるより、沿道に声をかけてくれる人がいる道を選ぶほうが、ずっと長く走れます。孤立は弱さではなく、構造的に起きやすい状況です。だからこそ、意識してつながりを作ることが、介護を続けるための技術のひとつになります。
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