デイ・ショートの利用調整を相談するコツ
本人が納得する形でサービスを増減する相談の進め方。
ケアマネとの情報共有に医師の所見が役立ちます。認知症を専門とする医師が48時間以内に回答します。初回¥500〜。
田村美和子が義母のハツを説得してデイサービスの日数を増やそうとしたのは、パートの勤務日数が週三日から週五日に増えた春のことだった。相談もなしにケアマネジャーの小野寺良子に電話をかけ、「母をデイに週四日でお願いできますか」と伝えた。悪気はなかった。仕事が忙しくなるのだから当然の調整だと思っていた。
ところが翌週、送迎の予定表がカレンダーに貼られているのを見たハツが、朝七時半、身支度の途中で急に手を止めた。「これ、私が知らない間に決まってたのかしら」。ハツはそれ以上何も言わず、その日は玄関先で座り込んで動かなくなった。迎えの車が来ても乗ろうとせず、運転手に頭を下げて美和子が謝る羽目になった。夜、布団の中でハツはぽつりと言った。「厄介払いされる気持ちになった。私は邪魔なのね」。美和子は返す言葉がなく、しばらく黙って天井を見ていた。
翌週のモニタリングで小野寺に相談すると、「変更を決める前に、まずお義母さんご本人がどう感じているか、三人で顔を合わせて聞いてみませしょう」と提案された。半信半疑だったが、次の訪問日に三人でお茶を飲みながら話す時間を作った。ハツに「デイのこと、どう思ってる?」と聞くと、意外にも「行くのが嫌なんじゃない、勝手に決められたことが嫌だったの」と答えた。さらに聞くと、デイでは同じ席になる藤田さんという友人ができていたこと、家より湯船が広くてお風呂が楽なことも。本音では気に入っていたとわかった。
そこで小野寺が「週二日を、まずはお試しで週三日にして、一ヶ月後にまた三人で様子を聞かせてください」と区切りを提案してくれた。美和子も「藤田さんとゆっくりお風呂に入れる日も増やせたら良いわね」と、本人にとってのメリットを言葉にして伝えた。ハツは少し考えてから「試してみるわ」とうなずいた。一ヶ月後、ハツは自分から「今日はデイの日だから早く支度しなきゃ」と言うようになっていた。
本人が納得できる形にする相談の実践ポイント
本人の「行きたくない理由」をしっかりと把握する
頻度を変える云々と提案をする前に、本人が今の環境についてどんなことを気に入っているのか、どんな不安や不満があるのか本人の言葉として聞く。ハツの場合、行くこと自体ではなく「自分の意思が問われることなくサービスの日程が決まってしまうこと」への不安があった。
変更理由は本人にとってのプラスを含め客観的に伝える
「私が楽になるから」だけではなく「広いお風呂がゆっくり使えるわ」「藤田さんに会える日が増えるわね」など、本人の生活につながる言い方でもメリットを表現する。
ケアマネと三者で顔を合わせる場を作る
電話だけで済ませず、家族・本人・ケアマネの三人が同じ場で話す機会を持つと、決定が一方的に感じられにくくなる。
変更は「お試し期間」で区切って提案する
いきなり本決まりにせず、一ヶ月後にまた話し合うと約束すると、本人の心理的なハードルが下がる。
本人の好きな要素をケアマネに具体的に伝える
席の配置、入浴のタイミング、仲の良い利用者や職員など、ピンポイントの情報がケアマネの調整力を高める。
家族の事情も正直に、ただしタイミングを選んで伝える
仕事の都合などを隠す必要はないが、本人抜きの決定と誤解されないよう、基本的には本人の前で共有する。
よくある失敗パターン
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記事の内容についての疑問や、ご自身・ご家族の状況に合わせた相談を、認知症を専門とする医師に直接お聞きいただけます。
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本人抜きであらかじめ決めてしまう
家族の都合を優先して先に手続きを進めると、本人には「勝手に決められた」という不信感だけが残る。
「あなたのため」を連呼して説得ぐせになる
繰り返し言われるほど本人は追い詰められた気持ちになり、かえって拒否が強くなる。
一気に調整を急ぎすぎる
例えば週二日から週五日など急激な変更は、本人の生活リズムへの負担が大きく、結果的に抵抗を招きやすい。
ケアマネに「言いにくいこと」を丸投げする
本人への説明をすべて任せてしまうと、本人は家族との関係にも距離を感じるようになる。
本人の「行きたくない」を全部受け入れて調整自体を諦める
一度の拒否で断念すると、介護者の負担が限界まで積み上がってしまう。
利用調整の相談チェックリスト
あれから半年、ハツは週三日のデイに通い続けている。藤田さんと並んで湯船につかるのも、同様に楽しみらしく、美和子が「来月からもう一日増やしてみる?」と聞くと、前向きに「そうね、あなたも忙しいでしょうし考えてみようかしら」と答えるようになった。決めるのは自分だという実感が、ハツの中にあるからだろう。デイやショートの利用調整は、回数だけを増やす作業ではなく、本人がその変化を自分ごととして受け止められるかどうかにかかっている。ケアマネとの相談は、その橋渡し役を頼める貴重な機会なのだと、美和子は今は思っている。
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