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ホーム記事引っ越し時の介護保険と住所地特例
ケアガイド医師査読済 · 2026年7月公開 2026年7月5日

引っ越し時の介護保険と住所地特例

転居・施設入所時の保険者と手続きの注意点。

認知症介護保険住所地特例cluster:system-services

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「介護保険はどこから申請する?」「どんなサービスが使える?」を認知症を専門とする医師が整理してお伝えします。

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母が「帰りたい」と繰り返すようになったのは、特別養護老人ホームへの入居から半年ほど経った頃だった。


南条玲子が施設に通うたびに、認知症の母・南条文江さん(78歳)はガラス張りのデイルームで窓の外を眺め、決まって「家はどこ?」と問いかけた。玲子は「もうここがお家だよ」と答えるしかなく、その言葉が正しいのかどうかも自信が持てなかった。


問題が表面化したのは、施設入居から8か月後のことだ。更新手続きの案内が文江さんの旧住所、つまり娘の玲子が住む横浜市内の自宅に届いた。文江さん自身はすでに施設のある相模原市に住民票を移していた。「あれ、保険者ってどこになるんだっけ」。玲子は区役所の窓口に出向いたが、担当者から「施設に住民票を移してしまうと、相模原市が保険者になります。でも……住所地特例という制度はご存じですか?」と聞かれ、戸惑いながら「いいえ」と答えた。


玲子が後から知ったところによると、住所地特例とは、介護保険施設や特定の有料老人ホームなどに入所するために住民票を施設の所在地に移した場合でも、元の市区町村が引き続き保険者として給付を行う制度だという。母は施設入居前から横浜市の介護認定を受け、ケアマネジャーとも信頼関係を築いてきた。それが相模原市に保険者が変わると、担当ケアマネを変更しなければならない可能性が出てきてしまう。


「先に相談しておけばよかった」。玲子はそう思ったが、ケアマネから住所地特例について説明を受けた記憶がなく、施設への入居を急いで決めた時期には手続きのことまで頭が回らなかったのも事実だった。


窓口の担当者と30分以上かけて経緯を整理した結果、母は施設入居前にすでに横浜市から被保険者証の発行を受けており、住所地特例の対象施設(特別養護老人ホームはこれに該当する)への入所だったため、横浜市が保険者を継続していることが確認できた。住民票を相模原市に移しても、介護保険上の保険者はあくまで横浜市のままだという。玲子は胸をなで下ろしたが、「ちゃんと把握していなくて思わずあせってしまいました」と振り返った。


その後、玲子は母のケアマネジャーと改めて面談し、今後の住所変更が生じる場合の手続きフローを確認することにした。「住所地特例は自動的に適用されるわけではなく、もともとの市区町村への届け出が必要なケースもある」と教わり、彼女はそれをノートに書き留め、すぐに横浜市のホームページで確認した。


文江さんはその後、施設での生活が少しずつ落ち着いてきた。窓際でヘルパーと一緒に塗り絵をする時間が増え、同時に「帰りたい」と訴える頻度も減っていった。玲子はそれでも毎週通い続け、面会のたびに母が「あなた、来てくれたの」と嬉しそうに笑うのを楽しみにしている。書類の束を整理するときには必ず「保険者は横浜市」という自分のメモを確認するようにしている。


check 介護保険と住所変更で必ず押さえるべきポイント


住所地特例の対象施設を事前に確認する

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、特定入居者生活介護(有料老人ホームなど)が原則として住所地特例の対象となる。グループホームや地域密着型サービスは対象外となるため、入所先の施設種別を必ず確認しましょう。


元の市区町村への届け出を忘れない

住所地特例は施設の所在地に住民票を移した時点で自動的に適用されるわけではなく、旧住所の市区町村に「介護保険住所地特例適用・変更・終了届」を提出する必要がある。施設入所と住民票の転入・転出の手続きと同時に行うのが確実です。


被保険者証の差し替えを確認する

住民票を移すと新しい市区町村から被保険者証が発行される場合があるが、住所地特例の場合は元の市区町村の被保険者証が有効のまま継続される。新しい被保険者証が届いても混乱しないよう、どちらが有効かをケアマネジャーと確認しておきましょう。


ケアプランとケアマネジャーの所属を整理しておく

保険者が変わらないからこそ、元のケアマネジャーを継続しやすいのが住所地特例のメリットだ。ただし担当事業所の所在地や契約上の制約によっては引き継ぎが生じることもあるため、入所前に担当ケアマネジャーと「今後も継続できるか」を確認しておきましょう。


要介護認定の更新先は保険者の市区町村

住所地特例が適用されている場合、要介護認定の更新申請は施設所在地の市区町村ではなく、保険者である元の市区町村に対して行う。更新通知の送付先も元の住所(または転送先)にしておく必要がある。通知が旧住所に届く場合を想定して転送設定をしておくと安心ですね。


施設移転や施設種別の変更が生じたら再確認を

住所地特例が適用されている状態でも、他の施設に転所したり施設の種別が変わったりすると、住所地特例の扱いが変わることがあります。「一度適用されたら永久にOK」ではなく、転所のたびに届け出の要否を確認するようにしましょう。


alert よくある失敗パターン

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施設選びの段階で住所地特例を知らないまま進める

「良い施設が見つかった」という安心感から、住民票の扱いや保険者の変更について確認しないまま契約に進んでしまうケースが多い。そもそも施設から説明されないこともあるため、家族側から必要に応じて積極的に「住所地特例の対象ですか?」と確認することが重要だ。


住民票の転出入だけ済ませて終わりにしてしまう

市役所の窓口では住民票の転出入の手続きは行ってくれるが、介護保険の届け出は別途必要です。「住民票を移したから手続き完了」と思い込み、介護保険上の届け出を忘れたまま保険者が自動的に変わってしまうというミスが起こりやすい。


新しい被保険者証が届いたので古い被保険者証が無効だと思ってしまう

住民票を移すと施設所在地の市区町村から被保険者証が届く場合がありますが、住所地特例が適用されていれば有効なのは元の市区町村が発行した被保険者証です。複数の被保険者証が手元にある状況で混乱し、サービス事業者に誤った保険者情報を伝えてしまうとトラブルの原因になることも。


要介護認定の更新申請を施設所在地の市区町村に出してしまう

更新の時期に「施設がある市区町村の窓口のほうが近いから」と施設所在地に申請してしまうと、受け付けてもらえない可能性が。更新申請は保険者(元の市区町村)に対して行うのが原則となるため、認定更新の時にはしっかりと確認しよう。


転所・退所後の住所地特例の終了届を出し忘れる

施設を退所して自宅に戻ったり、別の施設に移ったりした場合、住所地特例の終了・変更の届け出が必要だ。これを忘れると、その後の介護保険の給付や認定更新で不整合が生じる原因になります。


引っ越し・施設入所時の介護保険 確認チェックリスト

  • 入所する施設が住所地特例の対象施設(特養・老健・介護医療院・有料老人ホームなど)であることを確認した
  • 住民票の転出入と同時に、元の市区町村の介護保険担当窓口に住所地特例の届け出を行った
  • 有効な被保険者証がどちらの市区町村から発行されたものかを確認し、ケアマネジャーと共有した
  • 要介護認定の更新通知が届く送付先(元の住所または転送先)を設定した
  • 転所・退所の際には住所地特例終了の届け出が必要なことを確認した
  • 担当ケアマネジャーが保険者変更後も継続できるかどうかを事前に確認した

  • 玲子は最近、同じ施設に通う家族と待合室でよく顔を合わせるようになった。そこでたまたま「うちも住所のことでもめた」という話題になり、玲子は自分が経験したことを伝えた。「ケアマネさんに先に確認してみて」。その一言が、相手の家族の早めの行動につながったらしい。文江さんは今日も施設の窓際で、差し込む午後の光を顔に受けながらうとうとしていた。玲子がそっと隣に座ると、目を開けて「あなたね」と言い、また目を閉じた。制度の手続きは煩雑で、わからないことだらけだった。でも一つひとつ確認してきた積み重ねが、母の療養環境を守ることにつながっていると、玲子は静かにそう思っている。

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    本記事は神経内科・精神科医師 yuyu MD PhDによる監修・査読を経て公開しています。 査読日: 2026年7月

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    公開日: 2026年7月5日

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