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ホームBPSD認知症の幻覚(幻視・幻聴)——見えないはずのものが見える理由と、家族の対応ガイド
BPSD症状医師査読済 · 2026年7月公開 2026年7月10日

認知症の幻覚(幻視・幻聴)——見えないはずのものが見える理由と、家族の対応ガイド

「そこに人がいる」「虫が這っている」——幻覚は本人には本当に見えている体験です。レビー小体型認知症で特に多い幻視・幻聴が起きる理由と、否定せず安心につなげる対応の工夫を解説します。

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  • 「知らない人が部屋にいる」「亡くなった家族が座っている」など、実在しない人物や動物が見えると訴える
  • 誰もいない方向に話しかけたり、聞こえるはずのない音や声について話す
  • 本人にとっては非常にリアルな体験で、驚いたり怖がったりする様子がある
  • このような幻視・幻聴が繰り返し見られる場合、認知症のBPSD(周辺症状)としての幻覚を考えます。特にレビー小体型認知症では初期から幻視が出やすいことが知られています。一方で、数日以内に急激に始まった場合や、意識レベルの変動を伴う場合はせん妄の可能性があり、早めの受診が必要です。


    なぜ幻覚が起きるのか


    幻覚は「気のせい」でも「嘘をついている」わけでもなく、脳の視覚・聴覚を処理する仕組みの変化によって本人には実際に「見えている」「聞こえている」体験です[1]。


    後頭葉・視覚関連領域の機能変化 → レビー小体型認知症では、視覚情報を処理する後頭葉や、注意・覚醒に関わる神経伝達物質(アセチルコリン)の働きが低下しやすく、これが鮮明で具体的な幻視を引き起こす一因とされています。


    視力低下・視空間認知の変化 → もともとの視力低下や、影・模様・光の反射などを人や動物と誤認しやすくなる視空間認知の変化が、幻視のきっかけになることがあります。


    薬剤の影響 → パーキンソン病治療薬や一部の抗コリン薬、睡眠薬などが幻覚を強めることがあります。新しい薬を始めた後に幻覚が増えた場合は、薬剤性の可能性も念頭に置いて、主治医と相談してください。


    環境要因 → 薄暗い部屋、テレビの映像、壁の模様、物の影などが誤認のきっかけになりやすく、特に夕方から夜にかけて症状が強まる傾向があります。


    疾患幻視・幻聴の頻度特徴
    レビー小体型約60〜80%初期から出現しやすく、人物・小動物の鮮明な幻視が多い
    アルツハイマー型約10〜15%進行期に出現することが多い
    パーキンソン病約20〜40%治療薬の副作用として出ることがある

    ※頻度は報告により幅があり、上記はおおよその目安です[1]


    今日からできる7つの工夫


    否定も肯定もせず、まず気持ちを受け止める → 「そんなのいない」と否定すると本人は孤立感を強めます。「怖かったですか」「驚きましたか」と気持ちに寄り添う声かけを優先します(ちなみに幻覚は本人にとって怖いものでは「ない」ことがあります)。


    影から幻覚が飛び出してくる → 照明を増やし、影ができにくい環境にすることで視覚的な誤認のきっかけを減らせます。特に夕方から夜にかけて早めに照明をつけておくと効果的です。


    誤認の原因になりやすい物を片づける → 柄物のカーテン・じゅうたん、姿見、複雑な模様の壁紙などは誤認の引き金になりやすいため、可能な範囲で無地でシンプルなものに替えます。


    話題や場所を変えて気をそらす → 「お茶を飲みに行きましょう」など、別の行動に誘うことで自然と幻覚への注目がそれることがあります。


    日中に日光を浴びる時間を作る → 概日リズムを整えることで、夕方に症状が強まる悪化を軽減できる場合があります。


    幻覚の内容・頻度・時間帯を記録する → いつ、どんな幻覚が、どのくらいの時間続いたかを記録しておくと、受診時に医師が薬剤調整や診断を行う際の重要な手がかりになります。


    新しい薬を始めた前後の変化に注意する → ただし薬の変更後に幻覚が増えた・悪化したと考えた場合においても、自己判断で中止せず、必ず主治医に相談してください。


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    NG対応

    「そんなものいない」と強く否定・論破しようとする → 本人にはまぎれもなく実在する体験であり、否定されることで混乱や不信感が強まります。

    本人の目の前で家族が驚いたり怖がったりする → 家族の反応が本人の不安を増幅させ、幻覚への恐怖感を強めることがあります。

    暗い部屋にそのまま放置する → 誤認のきっかけを減らせず、症状が悪化しやすくなります。

    自己判断で薬を増減・中止する → レビー小体型認知症では薬剤過敏性があり、副作用が強く出る可能性があることに注意しながら、あるいは相互作用の複雑な薬剤も数多くあるため、主治医は細心の注意を払って処方を作成しています。変更が必要だと感じた場合も、まずは必ず医師の指示に従ってください[2]。


    山本和子さん(78歳、レビー小体型認知症)の場合


    夕方になると「知らない子供が庭にいる」と繰り返し訴えるようになりました。娘の山本恵さんが最初は「いないよ」と否定していましたが、かえって不安がる様子が強まったため、「心配だったね、私と一緒に確認してみようか」と寄り添う声かけに変えたところ、和子さんは落ち着きを取り戻すことが増えました。庭に面した窓のカーテンを光のちらつきを抑えるような厚手のものに替え、夕方の照明を早めにつけるようにしてからは、幻視を訴える頻度が大幅に減りました。


    木村正一さん(84歳、アルツハイマー型認知症)の場合


    進行期に入り「亡くなった妻がそこに座っている」と話すようになりました。息子の木村隆さんは最初戸惑いましたが、主治医に相談したところ「実害が無いのであれば無理に否定せず、本人の訴えを尊重してよい」との助言を受け、「お母さんがそこにいたら嬉しいね」と穏やかに応じるようにしました。強く訂正しないことで、正一さんの表情が穏やかになる時間が増えたといいます。


    よくある家族の疑問


    Q. 幻覚と妄想はどう違うのですか?

    幻覚は「実際にないものが見える・聞こえる」という知覚の誤りで、妄想は「事実に反する考えを強く確信する」という思考内容の誤りです。「物を盗られた」と確信するのは妄想、「そこに人がいる」と見えるのは幻覚にあたります。


    Q. 幻覚は薬で治りますか?

    抗認知症薬は幻視の改善に効果を発揮することがあります。一方で抗パーキンソン病薬はむしろ幻視の原因になるので注意してください。生活に支障が大きい場合は抗精神病薬が検討されることがありますが、レビー小体型認知症には薬剤過敏性があり、副作用(過鎮静・パーキンソン症状の悪化など)が出やすいため、少量から慎重に調整するのが基本方針です[2]。


    Q. 幻聴だけの場合も同じ対応でいいですか?

    基本的な対応の考え方(否定せず気持ちを受け止める、環境を整える)は共通します。ただし幻聴が強い恐怖や被害的な内容を伴う場合(たとえば殺してやるといった声が聞こえるなど)は、早めに医師に相談してください。


    Q. 幻覚を訴えるたびにひどく怖がります。どうすればいいですか?

    安心できる声かけと環境調整に加え、頻度や内容がひどい場合は医師に相談し、必要に応じて薬物療法も検討します。家族だけで抱え込まず、専門家に相談する選択肢を常に持ってください。


    Q. 施設のスタッフにも幻覚のことを伝えた方がいいですか?

    はい。幻覚の内容や頻度、効果があった対応方法を共有しておくと、施設でも同じように落ち着いた対応をしてもらいやすくなります。


    Q. 幻覚が急に始まりました。認知症が急に進行したのでしょうか?

    数時間〜数日という短期間で急激に幻覚が始まった場合は、せん妄や感染症、脱水、薬剤の影響など別の急性要因の可能性があります。認知症の進行と決めつけず、早めに受診してください。


    Q. 家族が幻覚の話に付き合うのは良くないのでは?

    本人を傷つけない範囲で話に合わせることは、否定して混乱させるより望ましい対応とされています。ただし、本人の安全に関わる要求(幻覚の人物のために外出するなど)には慎重な線引きが必要です。


    Q. 本人は自分の幻覚を「おかしい」と自覚していますか?

    初期には「見えるけど本当じゃないかもしれない」と自覚がある場合もありますが、進行すると自覚が薄れることがあります。ただし自覚の有無に関わらず、否定せず安心を優先する対応が基本です。


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  • 知識: パーキンソン病と認知症の関係
  • 体験談: 物盗られ妄想への対応
  • Tips: 目線を合わせ、穏やかな表情で接する
  • BPSD症状ガイドに戻る

  • [1]: 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」より

    [2]: McKeith IG, et al. "Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies" (Neurology, 2017) — レビー小体型認知症の薬剤過敏性について

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    寝室の環境を整える(暗さ、静かさ、温度)

    快適な睡眠環境で安眠をサポート

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    医師査読済コンテンツ

    本記事は神経内科・精神科医師 yuyu MD PhDによる監修・査読を経て公開しています。 査読日: 2026年7月

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    公開日: 2026年7月10日

    参考文献

    1. [1]McKeith IG, et al.. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology (2017)
    2. [2]日本神経学会. 認知症疾患診療ガイドライン2017 (2017)
    3. [3]NICE. Dementia: assessment, management and support (NG97) (2018)

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