レケンビ皮下注とは?点滴との違い・自宅投与の条件・費用を解説
最新研究医師査読済 · 2026年9月公開 2026年9月17日

レケンビ皮下注とは?点滴との違い・自宅投与の条件・費用を解説

2026年9月、レカネマブ(レケンビ)の皮下注射製剤「レケンビ皮下注250mgペン」が日本で承認されました。点滴静注との違い、在宅投与の条件、費用の見通しを、現時点で分かっていることと未定のことに分けて解説します。

Yuya Kobayashi, MD, PhD

医療監修

Yuya Kobayashi, MD, PhD

認知症専門外来・在宅診療医


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2分でチェック

2026年9月16日、早期アルツハイマー病治療薬レカネマブ(商品名レケンビ)の皮下注射製剤「レケンビ皮下注250mgペン」が、日本で承認された[1]。これまで2週間に1回・約1時間かけて行っていた点滴投与が、週1回・自己注射も視野に入れられる皮下注射に置き換わる可能性がある製剤で、米国・中国に次いで3カ国目の承認となる[1]。ただし、薬価はまだ決まっておらず、実際に処方できるようになるのはもう少し先になる見込みだ。


画像について

記事冒頭の写真は、参考として掲載した米国で承認されている皮下注製剤(360mg、維持投与用)のパッケージです。日本で承認されたのは250mgペン(後述)で、これとは別製剤にあたります。


2026年9月17日時点の状況

レケンビ皮下注は「承認済み・発売前」です。薬価収載は2026年11月ごろ、発売はエーザイが2026年12月末までを目標としています[1]。在宅自己注射に必要な保険上の手続き(在宅自己注射指導管理料の対象薬剤への追加)も、この記事の時点ではまだ確定していません。ここに書いた見通しは変更される可能性があります。


点滴と皮下注のちがい

週1回

500mg

点滴は2週に1回

約15秒

1回の投与時間

点滴は約1時間

1.4%

全身性の注射反応

点滴は約26%

※投与量・全身性反応の数値は承認時のエーザイ発表資料による


レケンビ皮下注とは何か


レケンビ皮下注は、既存の点滴静注製剤と同じ有効成分(レカネマブ)を、注射器で皮下に投与できるようにした新しい剤形だ。効能・効果は点滴静注と同じく、早期アルツハイマー病(軽度認知障害〜軽度の認知症)による認知機能低下の進行抑制で、新しい病気に対して使えるようになったわけではない[1]


承認の根拠になったのは、皮下注射と点滴静注で体内に取り込まれる薬の量がほぼ同じであることを示すデータ(曝露量比104%)と、点滴から皮下注に切り替えた患者を追跡した臨床試験の一部データで、皮下注そのもので大規模な効果検証の試験をやり直したわけではない[4]。副作用の起こりやすさも、投与経路ではなく体内に入る薬の量に左右されるとされており、皮下注にしたからARIA(アミロイド関連画像異常)のリスクが下がるわけではない点は誤解しやすいので注意したい[4]


点滴との違い


項目点滴静注(従来)皮下注(レケンビ皮下注)
投与量・頻度10mg/kgを2週間に1回500mg(250mgペン×2本)を週1回
1回の投与時間約1時間約15秒/本
投与場所医療機関での点滴医療機関、条件を満たせば在宅も視野
投与する人医療者医療者、条件を満たせば患者本人・介護者も
全身性の注射・投与時反応約26%1.4%

皮下注でもっとも変わるのは通院の負担だ。全身性の注射・投与時反応が起こる割合も、点滴の約26%に対し皮下注では1.4%と低い[1][4]。一方、局所の注射部位反応(腫れ・かゆみなど)は皮下注で約11%に起こるとされ、こちらは点滴にはなかった新しいタイプの副作用にあたる[4]


自宅で打てるのか


レケンビ皮下注は「日本で初めてかつ唯一の在宅投与が可能な抗アミロイド療法」と説明されている[1]。ただし、誰でもすぐに自宅で打てるわけではなく、次のような条件が付いている[1]


1

初回の投与は必ず医療機関で、医師が行うか、医師の直接の監督のもとで行うこと

2

医師が患者ごとに自己注射の適否を慎重に判断すること

3

患者・介護者に十分な教育訓練を行い、リスクの理解と確実な自己投与の技術を医師が確認すること

4

その後も医師の管理・指導のもとで投与を継続すること


さらに実務面では、在宅で自己注射をした分の費用を保険で扱うには、厚生労働省が定める「在宅自己注射指導管理料」の対象薬剤にレケンビ皮下注が追加される必要がある。この追加は承認から60日以内に中央社会保険医療協議会(中医協)で審議される見通しだが、この記事の時点では確定していない[1]。つまり、承認されたばかりの今は、在宅投与に切り替わるまでにはもう少し手続きが残っている段階だ。


皮下注になっても変わらないこと


投与方法が変わっても、その前後にある手順は基本的に変わらない。


  • 診断のための検査: アミロイドβの蓄積を確認するアミロイドPET検査または脳脊髄液(髄液)検査は、皮下注でも引き続き必要と考えられる。同じ効能・効果の薬である以上、診断の要件が緩むわけではない。
  • 専門医療機関・専門医の要件: 点滴の最適使用推進ガイドラインでは、1.5テスラ以上のMRIやアミロイドPET等が実施できる施設、一定の臨床経験を持つ専門医であることが求められている[5][6]。皮下注を含めたガイドラインの改訂版は、この記事の時点ではまだ公表されていない。
  • 定期的なMRIによるARIAの監視: 皮下注でも副作用の起こりやすさは変わらないため、投与開始前後の頭部MRIによる経過観察は引き続き必要になる[1]

  • つまり、「在宅で投与できる」ことと「通院が不要になる」ことは同じではない。診断・投与適否の判断・定期的なMRIチェックのための通院は、これまでと同様に続くことになる。


    費用はどうなるか


    レケンビ皮下注そのものの薬価は、2026年9月時点ではまだ決まっていない。参考として、点滴静注の現在の公定薬価は、2025年11月の費用対効果評価に基づく引き下げにより、500mg1瓶が97,277円(引き下げ前は114,443円)となっている。体重50kgの場合の点滴投与(10mg/kg・2週間に1回)を1年間続けると、薬剤費は公定薬価ベースで年間約253万円になる計算だ。


    高額療養費制度の対象である点は点滴と変わらないと見込まれ、一般的な所得区分(年収約370万〜770万円)であれば、自己負担は月8〜9万円程度、年間100万円前後が目安になる。ただし、これは点滴の実績をもとにした試算であり、皮下注独自の薬価が決まれば変わる可能性がある。


    いつから使えるようになるか


    2026年9月16日に承認されたあと、薬価収載が2026年11月ごろに見込まれており、エーザイは2026年12月末までの発売を目標としていると説明している[1]。実際に医療機関で処方が始まる時期は、薬価収載の手続きの進み方次第で前後する可能性がある。


    医療情報に関するご注意

    この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療の代替にはなりません。薬価・発売日・在宅投与の保険上の取り扱いは変更される場合があります。投与の可否や時期については、必ず主治医・専門医療機関にご確認ください。体調の急変時は119番、判断に迷う場合は救急安心センター事業(#7119)にご相談ください。


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